さよなら妖精

さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)

さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)

う〜ん、これはなんと言う種類の小説なんでしょう。推理小説なのかなあ、と思ったら出版社が東京創元社。謎の少女マーヤ(ユーゴスラヴィアからきた)は、英語が全然だめで日本語の微妙な表現が中途半端にわかる。そんなマーヤの日本の習慣と言葉への疑問が当たり前の日常風景を小さな謎に満ちた空間に変える。マーヤの誤解を解く形で謎は次々解明されつつ物語は進んでいく。そもそも主人公とその友達、マーヤが現れた時、高三だった面々は何がしたいのか、あるいは何をしたくないのか。最後に解明されるのはマーヤだけでなく、友人たちの想い…

ホットドック屋に入っていった時

「1人か」
「いえ?」
二人のはずだが。振り返る。
いない。
たぶん自分は阿呆面をしているだろうなと思いながら、店長に向き直る。
「おれ、最初から1人でしたか」

マーヤは遅れているだけですが、もしかしたらすべては幻想かとも思わせる場面。

平和な日常に差し込む遠国の紛争の影。メディアで報じられる惨状と自分達の幸福な状況との落差が心に痛い、「おれ」であり読んでいる「私」を巻き込む「おれたち」なのか。